水月昭道さん

 ぼくは、別に、仏教徒でもなんでもないのですが、最近、「親鸞」さんにちょっと興味を持ち始めていて、本を何冊か読んでみたいと思っていたりします。そんな中で、出会った本が、水月昭道さんの他力本願のすすめ という本です。この本については、読み終わったら、また、ご紹介するかも知れませんが、この、水月昭道さんという方、高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院という本のほうが有名らしく、就職口のない博士について書かれている方らしいです。
 日本が、高学歴になればなるほど、就職口がなくなるというおかしな方向に行っているのは、常々感じていたし、そういう貴重な人たちが活躍できない日本の将来にある種の不安を感じていたりするのですが、水月昭道さんの他力本願のすすめ にも、この辺りのことが、ほんの少しだけ書かれていました。
 文科省は、大学院重点化政策で、大学院への進学への門戸を広げたらしいです。そういえば、ぼくが大学生のころにも、院への誘いがあったことを思い出します。その当時、昔に比べて院へ入りやすくなったという話も、聞きていたように思います。この政策の建前上は、「博士」が欧米に比べて少ない日本は欧米に差をつけられてしまう。だから博士を増やして、対抗していくということらしいですが、結局は、少子化によって、大学生の数が減るので、減った分だけ、大学院生を増やし、既得権を維持するための政策だったと書かれていました。なるほど、これは、とてもわかりやすい話だと、ぼくは思いました。ぼくは、就職できないでいる博士がたくさんいることは、知ってましたが、なぜ、大学院生を増やしているのかは、疑問に思っていました。なるほど、大学維持のための一つだったわけですね。
 ぼくは、大学は、自分が好きな分野に進むことができたので、本当に勉強したいと思っていました。でも、大学で、勉強できることって、本当に基礎の基礎だったので、もっと何と言うか、使える勉強をしたかったというのが本音です。勘違いしないで欲しいのは、ぼくは、大学での勉強は、今、振り返ってみると、役に立っていると思っています。それをベースに、積んでいったものが、たくさんあるからです。むしろ、忘れてしまったものに、今現在苦しめられていて、復習することもたまにあるくらいです。でも、身につけたかったものは、そのさらに上の技術だったりするんですよね。
 大学は、本当に、研究をしたい人だけが残ればいいと思ったりします。この先、学術的に、知的好奇心を満たしたい人だけが行けばいいのかなと。そして、その道に進むことのメリットとデメリットをきちんと説明して、それでも、行きたいと思う人だけが研究者を目指せばいいと思ったりします。
 それより、若いときから、いろいろな分野で、プロを育てられる環境を作ったほうが、将来、その人のためや、日本のためになるのではと思ったりするわけです。お金を稼ぎながら、自分のスキルを高めていく。そういう世界のほうが、いろいろ、いいものが、世の中に出ていくような気がします。例えば、プログラマだって、高卒での対応は、ものすごく酷いものだったりするし、とりあえずの大学を選択肢から外すと、他に行き場所がなくなったりします。プロ野球のように、高卒から、その道にたたき込んで鍛えていくと、あるいは、モンスタープログラマーなんかが出てきて、ヒット商品やサービスをたたき出したりするのでは?と思わなかったするわけです。そして、プロ野球選手のように、ヒーローになる人でも出てくれば、そういう人を目指しす人が増えてきて、うまく行けば、経済を回す活力になるかも知れない。それに比べると、受け皿としての今の大学は、いろいろ問題がありそうですよね。
 博士の就職難のように、日本は、こういう飼い殺しのようなことを平気でやりますよね。この飼い殺しから、逃れようとすると異端児あつかいされてしまいます。そうやって、才能を潰していく世の中の将来は、明るいものとは思えない。そんなことを、いろいろと考えさせられてしましました。
 
 「親鸞」さんの本を読みたいと思っていたのに、大きな道草をしてしまいました。最近、「親鸞」さんに興味を持ち始めているのも、昨今起こっている種々の事件のせいかもしれません。昔の人から、ヒントをもらうのも、悪くないのでは?と思う、今日この頃だったりします。

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