たまたま、テレビ見ていたら、「心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU」という番組に、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーと、宮崎駿監督の息子、吾朗監督と、ドワンゴの川上会長が出演していました。今、ジブリの哲学という本を読み始めたところなので、なかなか興味深かったです。
その中で、ジブリには、企画書というものが存在しないというのが、とても印象的でした。企画書は、周りの人達に意図を伝えるという意味では必要なのかも知れませんが、宮崎監督にとって、意図を伝える相手が、鈴木プロデューサーだけだというのであれば、必ずしも、企画書の形にする必要はないのかも知れませんね。
本を読んでいると、ジブリのやり方は、クオリティは高いものが作れるのかも知れませんが、とても無駄が多いように思えます。そして、それを維持していくために、それなりに苦労をしているようにも見えました(やっている方達はそのように思っていないかも知れませんけど)。アニメーターの給料の薄給たるやすごいもので、何処かと似た話だなと思ったり、そういうところに、依存しないと、やっていけないような環境だったり、そもそも、こんなに長く続ける積もりがなかったといった話だったり、やはり、それなりに、苦労していそうな感じです。
アメリカの大手、ピクサーと比べると、ピクサーが分業の進んだ近代的な工場だとすると、ジブリは、町工場といった感じでしょうか?普通なら、とても太刀打ち出来そうにないのですが、ジブリの存在感たるや、すごいですよね。
ぼくは、自分の手におえる範囲で、ある程度やりたいことが出来る小さい規模で、自由にいろいろ出来る環境を整えられないかと、思いを巡らせているところがあるのですが、ジブリの物語を聞いていて、ふと、思ったのですが、こういう、非効率なことをまじめに続けて、クオリティを維持していくということは、真似されにくいのではないかと。というより、真似する気にならないですよね。以前紹介した、フレデリック・パークさんなんかも、一人でアニメーションを作ってしまったのですが、真似したいと思わないのではないでしょうか(というより、これは、真似できないですよね)?
効率がよくて、楽な仕組みというのは、誰もが真似したくなりますよね。だって、効率は、そのままお金に結びつきますから、お金を第一に考えて、より、儲けを求めれば、世に言う、無駄を省き、効率化ってことになります。なので、わざわざ、非効率なことを続けているジブリのようなやり方は、やろうとは思わないですよね。でも、こういうことを続けてやり通すっていうのは、ある意味、差別化をはかる一つのやり方なのかも知れません。もちろん、作り上げているものが、負けていたら話にならないのですが、妥協しないことによる差別化は、一つの方向なのかも知れません。だれにでも、出来るように、マニュアル化することで、どんな人にでも、出来るような技術を提供するという現代の考え方とは、真逆の考え方になるかも知れませんが、人は、得手、不得手があるのですから、出来ることにとことん拘るというのも、いろいろな才能が出てきて、面白いようにも思えます。
とは言え、実際にそれをやり通して、事業に結びつけるのは、一筋縄ではいかないでしょうね。才能も実力も必要だし、運もいるかも知れません。でも、やっているところがあって、不可能ではないというところに、ちょっとした希望が持てるのも、事実ですよね。
ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの
鈴木 敏夫
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