木に学べ 法隆寺・薬師寺の美 西岡常一

 少し建築に興味を持ったときに買ったような気がするのですが、積ん読状態だったこの本を何となく読んだのですが、とても面白かったです。西岡常一さんは、法隆寺の宮大工で、我々の知らない宮大工の世界や、法隆寺などの歴史的建造物について、宮大工の視点からいろいろ語られています。
 ぼくが、面白いと思ったのは、1000年以上に渡り残っている建造物が木で建てられているという点です。木というのは、鉄骨やコンクリートなどに比べて脆いイメージがあり、特に、湿気の多い日本では不向きな建材だと思っていたのですが、よく考えると、飛鳥時代の建造物は、木で出来ているんですよね。
 実は、同じ時期に、「土木・建築構造に関する最近の研究」というオンライン講座を受けたのですが、鉄筋コンクリートなんかはメンテナンスをしなければ、100年保たない建材だということを知り、思ったより脆いということと、自然環境の中で保たせるということが、思っているより難しいことなのかも知れないと感じていました。
 そう考えると、1000年以上の時を経て今なお現存している建物は、すごいことなんだと改めて気づかされました。もしかすると、現代の建築物で、1000年後に残っているものなんてないのかも知れませんよね。
 西岡さんの話を読むと、時代が下るにつれて、加工技術が上がってきて、いろいろな装飾なんかが出来るようになるのですが、その分耐用年数は下がっているそうです。そう考えると、コンクリートなんかは、いろいろな形に加工できる便利なもので、いろいろな部材を作ることは可能ですが、耐用年数はかなり短いですよね。コンクリートは、完全な人工物になると思うのですが、現代建築物では、安全性が高いということになっていますが、実は、思い込みがあるような気もしてきました。
 法隆寺に使われている木材は、樹齢2000年以上のヒノキだそうです。既に、2000年生きた木の特性をうまく使っているからさらに1000年以上保つ建造物になるということらしいです。樹齢2000年のヒノキは今の日本では入手することが難しいそうです。その辺りのことも少し考えさせられますよね。

 あとがきを読んで知ったのですが、これ、BE-PALの連載ものだったみたいです。さすがBE-PAL、昔から、面白いコンテンツを作っていたんだと改めて思いました。さらに、解説を読んで知ったのですが、この原稿、塩野米松さんの聞き書きだったんですね。塩野米松さんという方は、ほぼ日のコンテンツで知って、ちょっと興味を持っていました。思わぬところで、塩野さんの手がけた本を読むことができて、いい仕事をされている方だなと思いました。

カテゴリーbook

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です