大道芸のシステムに学ぶ

 最近、よく出版不況というようなことを耳にします。それは、ネットが普及したためということで、ネットが悪玉の親分であるような分析の仕方をしている方や、どちらかというと、あきらめムードで仕方がないというような言い方をしている方など様々ですが、ネットによる変化に対応できていないというのが、大方の見方なのでしょうか?
 確かに、週刊誌や月刊誌のような定期購読系のものは買わなくなったような気がするのですが、ぼくは、ネットのおかげで、本については、昔に比べて買っているような気がします。にも関わらず、不況だと言っているということは、今は、定期的に入ってくる週刊誌や月刊誌等の利益に依存しているということなのでしょうね。
 ネットをするようになって、本を買うようになった原因はあきらかで、ネット上では、多くの人が書評を出していて、それを見て興味を持つことが多くなってきているからです。これまでは、存在すら知らなかった本の存在を知ることが出来るというのは、ぼくにとっては、大きくて、ぼくの場合、本を買わなかった理由は、興味ある本の存在を知らなかったからだと思います。
 どんな良い本でも、その存在を知って貰わなければ、出してないのと同じです。いかに、その存在を多くの人に知って貰うかというのは、重要なファクターだと思います。それは、本に限ったことではなくて、音楽や、ゲーム、ソフト、オリジナルな商品、サービスなど全般に言えることなのではないかと思います。
 そこで、ふと、思いついたのですが、昔の大道芸人のように、ところ構わず、芸を披露して、その結果、良ければお金を頂くというシステムを考えてみてはどうでしょう。よくは知りませんが、大道芸人の方達は、通りで、人を集め、芸を見せます。そして、終わったところで、観客の皆さんから、投げ銭で、お金を徴収して行くというシステムです。入場料を先に払うのではなくて、まず見て貰って、良ければお金を払ってもらう。よく考えると、これってとても理にかなっていますよね。
 中身を見る前にお金を払うのって、もし満足出来なかったら、詐欺にあった気分になりますよね。ネットの販促でも、アフェリエイト系と思われる書評については、うまく読者を誘導して買わせるのですが、実際、読んでみると、がっかりすることが多かったりして、満足出来なかったことも多々ありました。これは、双方に取って、損じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
 電子データになれば、違法コピーがはびこるという話は、良く聞くのですが、違法コピーは、ある種良い宣伝になっていると思うんです。ただ、それが、ビジネスに結びつかないのは、前払いなシステムになっているからじゃないのかなと考えました。
 例えば、音楽のデータを時限式のデータで公開して、数ヶ月は全て無料で公開します。iPodでもなんでも、好きな環境で、好きなようにお楽しみ下さいとしてしまって、数ヶ月経つと聞けない状態にする。もし、継続して聞きたい場合は、購入して下さいとしてしまう。このデータについては、どれだけコピーが出回っても問題ないですよね。寧ろ、どんどんコピーして欲しい。もっと言えば、ダウンロードされたサイトには、特典を与えるくらいでいいのかも知れません。違法コピーが出回るくらいなら、こういうデータが出回ったほうがいいですよね。今の視聴データって中途半端な気がします。どうせやるなら、視聴者にじっくり吟味してもらえるようなシステムにすればいいのにとつくづく思います。こういう体験版的なもの(コピーフリーなもの)を提供者が準備すれば、紹介者は、大手を振って紹介出来るし、購入者も満足いくものだけをチョイス出来る。わざわざ、違法コピーを掲載するメリットもかなり薄れる。興味本位の一見さんにとっては、この体験版で十分と思われますから。どうでしょう、システムとしては、メリットが大きいと思いうのですが、如何でしょうか?(実は、このシステムは、ソフトのシェアウエアの考え方と同じです。今のソフトの状況を考えると、やはり、成立しないのかな~)
 ただ、このシステムは、商品に実力がない場合は、成立しません。後払いですから、体験して貰った後、なお欲しいと思わせるだけの実力が必要です。つまり、いままで、口先で買わせていたものについては、すべて拒否されることになります。これまでの商品の中で、果たして、どれだけのものが、生き残るかを考えれば、提供側は、よりシビアになるような気がします。でも、もう既に、情報過多でそういう状況になっていて、これから、そういう方向に進むと思われるのであれば、チャレンジしてみてもいいのかも知れません(あるいは、するしかないのかも)。
 と、だらだらと書いて来たのですが、ようは、そういうシステムが、個人的に欲しいと思った次第です。本や、漫画、音楽などなど、よくわからない情報に振り回されるのではなくて、ちゃんと内容を確認してから、買えるようにならないかなと。
 著作権の権利ばかりを主張していても仕方がないと思うんですよね。著作者は、見ても貰って、聞いて貰って、使って貰って、始めてそこに価値が生まれる。そんな当たり前のことを忘れているような気がするのですが・・・考えすぎなのでしょうか?