久しぶりの更新になってしまいました。書きたいと思うことは、結構溜まっていたのですが、溜まっては忘れを繰り返して今に至ってしまいました。こういうのは、習慣化することが大事と言いますけど、全くその通りだと思う、今日この頃です。書くことに対するストレスよりも、楽しむ気持ちを維持しつつ、やれたらいいんですが、なかなか日常に忙殺されてしまいます。
さて、相変わらず、追いついてないのですが、去年の人工知能学会誌を読んでいます。その中に、「パネル討論 HAI研究のおもしろさとは何か? 」という、HAIシンポジウム2008のパネルディスカッションをまとめたものがあったのですが、とても興味深く読ませてもらいました。
T-D-Fの園山隆輔さんのデザインの話にはじまり、富士通の村川賀彦さんの事業化に対する話、国立情報大学研究所の山田誠二さんの「機械にやさしい人」の話など、どれも、面白かったです。
ぼくは、人型ロボットのような擬人化系の話には、あまり興味がないのですが、人の役に立つロボットには、かなり興味があります。特に、人とロボット(道具)とのインターフェースについては、まだまだ未成熟な部分が多いのが現状で、機械を扱いきれていない人がまだたくさん居るような気がしてます(時代が進めば、当たり前に変化するのかも知れませんが)。そう言う意味で、こういう分野に興味を持ち始めているのですが、いろいろな考え方があって面白いです。
この討論会では、事業についての考え方も少し話題に上っていて、少し生々しい感じが面白いです。ビジネスを考える上でのポイントは、技術要素、採算要素、実需要素の三つがポイントで、このうちの実需要素がおざなりになっているんじゃないのとの指摘は、なかなか鋭いところを突いているような気がします。
園山さんは、デザインは、「関係性を構築する仕事」だそうで、とても面白い考えだと思いました。人とロボット(エージェント)との関わり方というのは、正に、この関係性をどう考えるかということに集約されるような気がします。これ、簡単なようで、実はとても奥が深い話ですよね。そこをとかく、かっこいいとか、かわいいなどの見てくれに捕らわれがちな、デザインから考えて行くというのは、かなり斬新な感じがしました。
しかし、この部分、実は、人によって大きく変わってくる部分でもあります。よく多様化という言葉が出てきますが、人によって、目的や条件が異なってくるため、この関係性を一元化していくことは、難しいような気がします。それ故、機能全部入りの機械が増えてしまっているのが、現状なのではないかと思います。これが使いにくいからと言って、それぞれの条件に合わせたものを個別にどんどん作っていくと、多様性は、叶えられますが、それを必要とする人は、少数化され、恐らく採算が取れないでしょう。そうなると、大多数の人が欲しているものをベースに、各自が、カスタマズして、自分の条件に合わせていくという方向に成らざるを得ないような気がするのですが、このカスタマイズというのは、人によって面倒だといわれてしまいまいます。あちを立てば、こちらが立たずと、なかなか難しい問題だと、つらつら考えてしまいました。
道具というのは、一昔前は、使う人が、いろいろと工夫して、自分にあったものに仕立て上げていたような気がします。今の世の中、物は、与えられて当たり前で、ある物からチョイスすることにかけては、とても、上手な人が増えているように思えます。でも、ない状態から、道具を作っていく(創造していく)ような人って、少ないような気がします。そのうち、誰かが、作ってくれるだろうと人任せで、工夫することを知らないのかも知れないなと、余計なことまで、考えてしまいました。
村川さんからは、事業化する時に、必ず問われることが、ロボットと今現存する情報端末との違いは何かということだそうです。この部分のインパクトが、その事業の特徴にそのまま繋がってきますので、大事な部分なのでしょうが、こういうところをはっきりさせるのって、実は、難しい作業だったりするような気がします。
ちなみに、おもしろさというテーマに対して、「仕事って基本的にはおもしろくないんで」という導入には、思わず、頷いてしまいました。
山田先生からは、「人に優しい機械」には、限界があるので、「機械にやさしい人」を目指そうというお話がありました。個人的には、機械が人間と同じように対等に話しが出来るようになるという知識は、技術的に無理ということがほぼ明らかになってきたというところに興味を持ちました。どういう理由で、無理と結論づけられてきているのか、興味が尽きないところです。
山田先生も、言ってしまえば、人間を中心に、ロボットを道具として、使用するような方向を考えていらっしゃるのかなと、勝手に推測しているのですが、この考え方には、共感が持てます。人のようなロボットを作るという方向ではなくて、やはり、人の役に立つロボットという方向がいろいろな意味で、面白いと改めて、思いました。
ということで、メモがてら、記録を付けておこうかと思います。興味を持たれた方には、読んでみてもらいたいと思ったのですが、どうも、公開はされていないようで残念です。