技術と数学

 最近読んだ本の中に、日本では、数学の価値が認められていないのではないかというようなことが書かれていました。
 ぼくは、最近、数学の必要性をすごく感じているのだけれど、確かに、日本の技術者は、数式をバカにしているきらいがあるのかも知れないと思いました。
 というのも、実際にやってみると、違っていることが多いというのが理由のなのではないでしょうか。
 数式が活躍しているものの一つが、シミュレーションだと思うのですが、日本の技術者は、シミュレーションを嫌う傾向があるような気がします。やった結果と実際が合わないので、シミュレーションやっている暇があったら、実測しろと言わんばかりです。
 でも、ぼくは、そうは思わいません。今の技術は、随分前からシミュレーション技術がなければ成り立たないところまで来ています。というのも、ICの中なんて実測することなんて出来ません。理論の積み重ねで、予想するしかないのです。その結果、あんなすごいICなんかが生まれているということではないでしょうか。
 このシミュレーション技術、日本発というものはないですよね。これは、日本で、そういうことやっても、商売にならないからじゃないかと思うんです。すなわち、これは、回り回って数学の価値が認めてもらえてないのかなというところに行き着きます。
 ぼくは、最近、画像処理と人工知能に興味が出てきているのですが、この二つはともに、理論が必要となってくる分野のような気がします。人工の知能を作ろうと思えば、ちゃんとした理論と、それを形にする数式が必要です。でも、書かれている内容は、とても難解で、今のぼくの知識とは、違う数学が必要な感じがしています。だから、数学の勉強をしないといけないなと思っていたところに、先の話に触れました。
 日本では、こういう理論をやっている人は、大金持ちになれません。それが証拠に、ドクターの就職難なんてへんな状況が発生しています。ドクターになろうかと言う人たちは、こういう所が、商売のネタになるはずで、その成果は、大きいものがあるはずなのに、世間の評価は、使えない人たちとなっています。それは、そういう根本的な理論や技術は、確立されてから、買ってくればいい。そういうものは、与えられるものであり、それを利用した製品を作れるものこそが、使える人なんだという認識だからではないでしょうか。
 
 少し前の日本であれば、それが必要なことだったかもしれません。でも、今、アジアの国々の技術レベルが上がってきている世の中では、それでは成り立たないような気がします。そんな世の中で、日本の頭脳の一翼を担うはずである、ドクターを始めとした理論屋さんが、活躍できる場が少ないというのは、致命傷になるような気がするのですが、どうなんでしょう。
 今のような世の中になってしまったからこそ、日本の底が見えてしまったような気がします。